今日は予定を早めて、森に行こうと思う。
天候が悪化する傾向にある。
本来の予定は、ここより北へ50キロ先の白浜港まで路線バスで行き、そこからさらに定期船に乗り、船浮と言う集落を目指す予定だった。
船浮は西表島の西方に位置する。
西表島の島内でありながら道路がつながっていない。
船でしか行くことができない集落で陸の孤島と称されている。
同じ日本人として、便利とかけ離れた船浮集落の方々がどのように工夫され生活されているのか、日常を見させてもらいたかった。
現在の生活は異常なまでのサービスと、便利の中に包まれている。
その中にあっても、深い欲が常に芽生え、満足の頂点にはない。
便利の代償は五感を削ぎとられ、
不便の対価は五感を進化させる。
同じ1なら後者でありたい。
船浮に出向き、その辺を少し掘り下げ、考えてみたかった。
昨日下見した山道を目指し歩いた。
航空写真でしか見たことのないこの島の内部を自分の目で見たかった。
それが一番の目的でもある。
営林関係の方が通ると思われる、幅2メートル弱の山道を登り歩いた。
途中、小さな告知板があり、経年劣化した紙には、入山されたまま、未だ下山されていない方々の写真と当時の装備品が書き記されていた。
改めて、気が引き締まる。
それをもってしても、全ての生命感に魅了された。
8メートル程もあろうヒカゲヘゴ、延々と枝分かれし群生を止まないタコノキ科のアダン、巨木に着生し巨大化したオオタニワタリ、甲高い鳴き声で延々と威嚇し続ける生き物、
前後左右上下をふわりふわりと飛翔するアサギマダラ、ヒュヒュヒュヒュヒューと特徴的に鳴くアカショウビンの鳴き声、重い空気、風…
全てに魅了された。
来てよかっか。
それより先が侵入していいか分からないほど更に閉ざされた感じがしたので、後日来る事として、
途中にあった樹林の中を流れる幅5メートル程の木々が入りくんだ川で、持参した渓流用3本継ぎのパックロッドにルアーをセットして投げてみる事とした。
ティムコのシケイダー
PE0.6にフロロ12Lbをセット。
確実に1投目で出る雰囲気。
不用意に立ち入らず、タックルをセットし、自身の影が水面に入らないポジションで15分ほど身を潜め水面を見張った。
いてる。
立ち上がらず、身を潜めた状態で、一番大きな木の隙間にルアーを投げ入れた。
着水と同時に、バシャーン!と魚がもんどりうって出た!
興奮の頂点に入る。
出たのは、通称"ジャングルパーチ、ほほに独特のドットマークがあり、鱗のグラデーションが非常に美しい魚。
手が震えるほど嬉しかった。
日がおちる前にここを出よう。
数時間かけて宿まで歩き帰ったら、山脇さんが笑顔で迎えてくれた。
なぜかすごく嬉しかった。
荷物をまとめられている。
"いつ出るんですか"と尋ねたら、
明日波照間に行きます!
明日から数日は天候が悪化するので、波照間どころか、西表も出たほうがいいと強く勧めた。
すると彼は、"そんな気になれないんですよ" と荷物をまとめながら悲しそうに僕に言った。
確かにそれも旅だと痛感し、この日から二度と人の旅に口を挟むのはやめた。
スーパーでオリオンビールを買い、船着き場の一番夕日が綺麗に見える場所で今日のお互いを伝えあった。
記憶に残る一日としてここに書きのこす。
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by gogohaze
| 2018-01-21 11:29